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2004 年 11 月 23 日 : トップ 1% のルール

ソフィア・クレイドルは、輝かしき未来のあるプロフェッショナルな若き異能集団だ。

プログラミング、システム管理、デザイン、コピーライティング、マーケティング等々について、社長である私が尊敬できる素質を持つ人たちだけで構成されている。

有能な人材を採用するために心がけているポリシーについてまとめてみる。

会社の未来はスタッフの働きによって築かれてゆく。だから、ベンチャーの場合、人材採用とは社長が最も力を入れるべき仕事だ。真剣勝負そのものだ。

「原因」があるから「結果」がある。紆余曲折はあった。持てる才能を遺憾なく発揮する人材を採用できる理由を多少なりとも蓄積できた。

いくつもの失敗をし、そこから学んで人は成長する。

人材採用を誤ると、ダメージは後遺症となって残る。

もはや過ぎ去りし日々のことだが。ネコの手も借りたいくらい忙しい時期に、不適切な人材を採用した。苦い経験をし、自らの身体で人材採用の大切さについて多くを学んできた。

「まとも」な人材ほど、会社の経営理念、事業内容などを知ってから応募しようとするものだ。だから、受け入れる側の会社もインターネットなどを活用し、まず第一に自社のことをありのままに分かりやすくアピールする必要がある。自社に合った適材を得るために。

「ソフィア・クレイドル」という会社を、1000 人で年商 100 億円ではなく、10 人で年商 100 億円を達成する企業にしたい。社員数が 100 名ならば、年商 1000 億円。そんな会社にしたい。

決して社員数は誇らない。目指すのは、1 人当たりのパフォーマンスを重視した経営を理想とする会社。

1 人 1 人のスタッフが普通の会社の 100 倍のパフォーマンスで働く。そんな逸材を求めて採用活動をしている。

近い将来、大リーガーのイチロー選手松井秀喜選手のように年収数億円を稼ぐ、まさしくプロフェッショナルなスーパースターがスタッフの中から出てくるだろう。

スポーツや音楽などの業界では当然であるようなプロフェッショナリティを追求することこそが、ソフトウェアビジネスの世界で生き残るための条件、常識となろう。

人を採用するときは、次の2つの質問をしてみるとよい。

1. その人と一緒に仕事をしたいのか?

2. その人に能力や才能(の萌芽)はあるのか?

1 番目の質問は、経営理念に合う人材かどうかを見極めるための問い。

2 番目の質問は、各分野においての、現在でなくとも将来的なプロフェッショナリティを推し量るための問い。

ソフィア・クレイドルでは、この 2 つの質問について、主観的な評価ではあるが、トップ 1 %以内の人材なら採用するという基本方針でやっている。簡単に言えば、100 人の応募に対して 1 人のペースで採用するということだ。

何故このような考え方が大切なのか?

全体を 100 として、そのうちの 80 を上位 20% のセールスマンが売り上げるというのがパレートの法則( 80 : 20 の法則 )だ。パレートの法則をこの上位 20% のセールスマンに適用すれば、上位 4% のセールスマンが全体の 64% を売り上げているということになる。

さらにパレートの法則をこの上位 4% のセールスマンに適用すると、上位 0.8% のセールスマンが全体の 51.2% を売り上げるということに帰結する。

単純にいえば、100 人の中で 1 番目の人材というのは 50 人分の働きをしてくれるわけだ。50 人分の仕事が 1 人で済むのだから、オフィススペースも 50 分の 1 でよい。なにより、厄介な労務管理に悩まされることが激減する。

だから、ソフィア・クレイドルは「トップ 1% のルール」を貫くのだ。

2004 年 11 月 22 日 : 時は流れる

京都を舞台に繰り広げられた、平家物語は次の一節ではじまる。けだし、永遠の真理をついた鋭く美しい箴言だ。

   祇園精舎の鐘の声
   諸行無常の響きあり
   沙羅双樹の花の色
   盛者必衰の理をあらわす
   おごれる人も久しからず
   ただ春の世の夢のごとし
   たけき者も遂には滅びぬ
   偏に風の前の塵に同じ

時の流れと共に何もかもすべてが変化してゆく。21 世紀に入り、変化もさらに加速をつけている。

いまとなっては懐かしい。右肩上がりの高度経済成長期は、ただ単純に決まりきったことを、決められたとおりする。それだけで良かった。創造性や独創性なんてものは一切求められなかった。そんな言葉は存在すらしなかった。

バブル経済の崩壊と共にモノ余りの時代が訪れた。本当に良いもの、価値のあるもの、役に立つもの、それしか人びとから評価されないようになった。いわば、"創る"ということが最も重視されるベンチャーの時代が幕開けしたといってもよい。

優良企業と称されていた大会社が次々と倒産し、吸収合併される。昨日まで誰も知らなかった会社が一夜にして誰もが知るところの存在となる。過去の歴史にたとえるならば、今は戦国時代なのかもしれない。多士済済のベンチャーが群雄割拠する時代となった。

混沌とする経済情勢の中、しばらく混乱が予想されよう。ベンチャーにとっては、運と実力、それ次第で、時流に乗り、這い上がれる。千載一隅のまたとないチャンスなのだ。

「運」というものは与えられるものではなく、自ら掴むものと悟ること。指を口に銜え、消極的にただ待ち構えているだけでは何も起きない。よくて現状維持が積の山。

17 年前、私は外資系コンピューターメーカーに入社した。コンピューターといえばその社名で呼ばれるほど、世界のコンピューター市場そのものを隈なく独占し、席捲していた。

当時、いまを時めく、マイクロソフトインテルシスコシステムズなんていう会社は零細も零細といってよいほど業界では無視できる存在に過ぎなかった。20 年の時を経て、コンピューター業界も大きく変貌を遂げた。

あの頃は人生経験も浅く、中学校で習った、平家物語の「栄枯盛衰」の意味するところなんて全然理解できなかった。世の中の変化というものを経験した今なら、少しはその意味がわかる。

巨大な企業も永遠ではなく、経営幹部らの奢りや傲慢によりあっという間に瓦解する、今日この頃。大企業であればあるほど、入社するなり、抜擢人事で経営幹部は有り得ない。

大企業に入社した場合、自分の命運はその会社の経営幹部に委ねられる。他人に自分の運命を左右されるほどリスクが大きいことはない。入社して数年後、そう思った。

30 歳前後の頃から、起業のチャンスを伺っていた。なかなか実現できずにいた。苛立たしい日々が何年も続いた。39 歳の時、ある日突然、人生において 2 度とないようなビッグチャンスが訪れたのだ。

起業するときに最も重要な要素は一緒に事業を展開するスタッフの人員構成。大企業といえども参入できないような、自分たちの強みを発揮できるニッチなエリアを見出すこと。2 つの条件が完璧に揃った。

早くも 20 代のうちにチャンスを掴む人もいるかもしれない。10 年かけてようやくチャンスにめぐりあえた。それだけにチャンスを大切にし、育てたい。

2004 年 11 月 21 日 : 売上をあげる

ソフィア・クレイドルの営業年度は毎年 10 月に始まる。今年度は第 4 期営業年度。

期が始まってまだ 2 ヶ月も経っていない。会計ソフトで残高試算表の数字をみてみると、前期と比較した、10 月から 11 月までの累積売上高の増減率の数字が 7000 %を超えていた。第 4 期は幸先の良いスタートをきることができた。できればペースを維持したい。

事業規模を大きく拡大したわけではない。1 年前と比較して、社員数は減っている。創業以来、経常の黒字は死守してきた。裏を返せば、それだけ第 3 期の前半までは営業面で苦戦を強いられる局面が多かった。

2004 年春から、製品販売に関して、研究開発部を含め、全員が一丸となって努力してきた。徐々に効果が具体的な数字となって現れてきたのであろうか。

類似製品は基本的には世界市場に存在しない。今、世界マーケットに競合製品は存在しないのだ。

創業の頃、「ソフィア・クレイドル」という社名も知られているわけではなかった。だから、お客様の立場からすると、「ホントに大丈夫なの!?」という印象が強かったと思う。起業家の方々には、ベンチャーが製品を販売する難しさをご理解いただけると思う。最初は想像を絶するくらい難しい。

ちょっと余談だが、創業の頃にお世話になったお客様ほど、爆発的に売上と利益を伸ばされている。なかには 3 年前は未上場企業だったのに、今では東証一部に上場されているお客様もいらっしゃる。

創業初年度にお世話になったお客様はいくら感謝の意を表しても表現しつくせないくらい、有難かった。お世話になっているお客様とは、これからも継続して良き関係を保ちたい。

大企業でサラリーマンをしていた頃は、「ブランド」が余りにも偉大だった。「ブランド力」を後光として営業成績を簡単に大きく伸ばすことができた。一旦会社を辞めてしまえば、もはや「ブランド」は使えない。これは大企業のサラリーマンが会社を辞めて起業したときに、誰もが経験する最初の辛くもあり厳しい大きな難関、現実なのだ。

ベンチャーというものはスタッフの総合した実力が全てな訳だ。自己の能力の限界にチャレンジしてみたい、或いは自分の真の実力を知りたいと思う人にとって、ベンチャーほどそれが単純明快に理解できる場は他に無い。

拙い経験からいえることは、大企業の場合、どうしても自分以外の他律的な要素が働き、それが実績となって現れていることが往々にしてある。大抵の人はそれが自分の実力であると錯覚する。

大企業に在籍している時はどうしても自己の能力を過信してしまうきらいがある。現実は、単に製品に「ブランド力」があるから売れているにすぎない。それに気付かずに起業すると大苦戦も甚だしい結果となる。

売上を安定させ、ぐんぐん伸ばすためには、ベンチャーといえども、大企業のような「ブランド力」をどうやって築くかが最大のテーマになると考えた。まだまだソフィア・クレイドルのブランド力は弱い。が、努力すること、思うことの強さで如何様にもできる。

ブランド力そのものが会社の生命線になると考えて、マーケティング部を中心に「ブランド」について勉強し、毎日実践を繰り返している。少しでもいいから着実にブランド力を向上させようとしている。年齢が若く、経験の浅い社員ばかりだが、あくなき努力と若さでカバーしようとしている。

一年前までは、会社として、営業は個人の能力や才能に頼る面が大きかったと思う。営業担当が保険会社や自動車会社のトップセールス並に売上をあげていたのであれば、何の問題意識を持つこともなく素通りし、あとでもっと大きな取り返しのつかない壁にぶつかっていたかもしれない。

「人間万事塞翁が馬」である。不幸中の幸いかもしれないが、ソフィア・クレイドルにトップセールスはいなかった。全員で真の意味で営業力やマーケティング力を強化するために真剣に取り組む機会をたくさん得ることができた。

マーケティング部を核にして全員がチームとなって、どうやって研究開発部が創った素晴らしい製品を、人びとに届けるかについて、研究を積み重ねている。

営業は人的な要素に頼るところがある。しかし、それに頼って組織を構成すれば、トップセールスが会社を辞めれば売上がガタ落ちとなり、下手をすれば倒産ということも十分あり得る話だ。

最も注力したことは、誰が営業であろうと(ソフィア・クレイドルでは「マーケティング」と呼んでいる)、最低必要な売上の数字は確実に楽々叩き出せるような販売システムを構築することだった。ヒントはサラリーマン時代に遡る。

大企業でサラリーマンをしていた頃、どちらも有名大企業であるが、大手清涼飲料水メーカーや大手通販会社をクライアントにして、マーケティングシステムのコンサルテーションや情報システムを構築するプロジェクトを経験した。プロジェクトマネージャーとして仕事をさせていただいた。全貌がよく分かり、数多くの価値のある商売のヒントを得ることができた。

どちらの企業にも共通に言えたのは、誰が注文を受けるにしても自然に売上が上がるような仕組みになっていたということ。

例えば、清涼飲料水メーカーの場合、街角でよく見かける自動販売機に関していえば、販売員はこの機械にジュースやコーヒーを詰め込むだけで売上が上がっていく。優秀な自販機は一年間で軽く 1000 万円を超えるセールスを記録した。下手すれば年間売上 1000 万円ですら達成できない営業マンは五万といるだろう。それをたった 1 台の自販機が自動的に、オートマティックに、この上なく美しい数字として弾き出してくれる。

事業を大きく伸ばすには、将来的にそのようなビジネスの仕組みをシステムとして実現する必然性がある。いきなり、そこまではは不可能であるが、ステップ・バイ・ステップでそのゴールに辿り着けるように創意工夫を重ねている。

この一年間でやったことを簡単に列挙してみる。

1. IT media mobile への寄稿:" BREW プログラミング入門"

2. 独自の BREW に関するノウハウの無償公開

3. SEO 対策の実施

4. Web の製品情報の充実

5. 無料評価版ダウンロードサイトの開設

6. 英語サイトの開設

7. 業務プロセスのマニュアル化

いま、このような努力は現在進行中であり、必ずしも完成しているわけでない。理想とする最終形からいえば、ほんの 5% 程度の完成度でしかない。創意工夫、改善、改良の余地はまだまだたくさんある。個人の才能や能力に依存しない販売システムをできるだけ早く理想形にもってゆきたい。

2004 年 11 月 20 日 : 人材を発掘する

プロフェッショナルな世界ほど「エース」の存在感というものは偉大だ。たとえば、松井秀喜選手にしても、大リーグ・ヤンキースに移籍した後の巨人は大きくスケールダウンしたと思う。

プロの世界では、人材発掘というこの重大な仕事を決して他社にアウトソーシングしていない。専業のスカウトが年中無休で有望な新人を求めて日本全国を駆け回っている。

会社経営においてもプロを目指すのであれば、プロ野球の球団や芸能事務所が自前で血眼になって人材を発掘するように、社長自らが先頭にたって会社経営の最優先課題と位置づけて行動することが肝心だ。

ソフトウェアを生業とする会社では、スタープログラマーの存在そのものによって、ビジネスの死命が決してしまうといっても過言ではない。プログラミングの天性、素質、才能に溢れんばかりの人材発掘に最も力を入れている。

人材紹介会社を使って人材を採用するという発想はほとんど無い。自社にとって有能な人材を世界中からスカウトするための専門部隊を創りたいほどだ。

エースが 1 人いるだけでも心強い。2 人、3 人と次第に増えることによって、会社というものは業績が心地よい指数関数曲線の軌跡を描いてゆく。

ベンチャーは、周りの環境に左右され、吹けば飛ぶような存在である。経営的に安定させるためにこのような手を打つことのプライオリティは極めて高い。それによって、いち早くベンチャーの域を脱することができるのだ。

有能な人材の発掘で心がけていることをまとめる。

肝心要なことは何か。

それは、向いているからこそ持てる才能を遺憾なく発揮するだろう人材を探すということだ。適材適所を究極なレベルにまで追い求めるということが理想だ。

ソフィア・クレイドルは、世界広しといえどもオンリーワン、しかもナンバーワンなものだけを創り、世界に提供することによって、人びとに感謝され、仕事の楽しみ、喜び、そして生き甲斐を見出そうとしている会社だ。適材を得るために、独創性や創造性といったような才能が他より抜きん出た人材を採用する努力を肝に銘じている。

独創性や創造性に秀でた人は、学校の成績でバラつきがあることが多い。成績がオール 5 というような優等生にはそのような人材は少ない。

例えば、数学はいつも 100 点満点だけど、関心の薄い国語や社会なんかでは 20 〜 30 点というような偏りがある人のことである。実際のところ、彼は、数学に 100 点以上の成績があるとするなら、500 点でも簡単に獲ってしまう。

活躍している人は、優等生タイプというよりは、偏ってはいるがユニークで貴重な才能を有するタイプだ。

求める人材の国籍を日本に限定していない。現在、ソフィア・クレイドルでは日本人以外にルーマニア人、中国人が働いている。海外にも有能な人材は確かにいる。

彼らは日本の教育を受けてきている訳ではないので、"一流大学⇒一流企業"のコースだけが成功のパターンでないことがよく分かっている。有望な人材を採用する意味においてはこれからはこのような海外の人材と共に仕事をし、成功を分かち合うことも重要な経営戦略となろう。

必然的に英語で話す機会も増える。日本語だけでなく、英語を使うこと、異なった文化を知ることで普段使っていない脳のシナプスが活性化され、「創る」という才能が育まれるのではないだろうか。

2004 年 11 月 19 日 : 売れる商品を創る

誰もが会社設立に必要な資本金を準備し、決められた手順で処理さえすれば、代表取締役社長という地位に就くことができる。けれども、この状態を永続させることは至難の業である。ほとんどの会社は設立数年後に消え去っている。なぜ消滅してしまうのか?理由は簡単である。サービスや商品が売れないから資金が底を尽き、倒産もしくは廃業に至るのだ。

末永く存続するような会社を設立しようとすれば、どうやって売れる商品やサービスを創るのか?システムを予め真剣に考えておくべきだろう。

創造力や個性を伸ばすような教育が全くといってよいほどなされていない。そのため、新たなるものを創る、ユニークなものを考案するのが苦手な人が多い。ワクワク、ドキドキするような何か面白そうなことを創造する経験や習慣になかなか巡り合えない。

何も考えずに起業すれば、苦戦が予想される。自分自身の創造性を養うような努力をすると成功する道は一気に拓ける。

売れる商品が必然的に生まれる方法論はないだろうか考えることが多かった。何故なら会社が自ずと存続する結果に繋がるからだ。

「原因」があるから「結果」がある。商品が売れる「原因」を見つけることができれば良い。

ソフィア・クレイドルは携帯アプリに必要なソフトウェアテクノロジーを提供する会社である。日本人の誰もが知っているような有名な携帯ゲーム着メロなどでも利用されている。

最近、コンテンツ以外に携帯電話向けの地図やグループウェア、金融決済、認証などのような生活やビジネスに密着した携帯アプリにも応用されている。

無意識のうちにコンピューターが生活の中で使われている状態を指して、ユビキタスコンピューティングという。ソフィア・クレイドルはユビキタスコンピューティングを現実としている会社なのである。

過去があって、現在があり、そして未来がある。未来は過去から現在へと続く軌跡の延長線上にあるといえる。現在の傾きと与えられた初期値から微分方程式を解くことで未来を予測しようとする発想は「売れる商品を創る」ためには大切だ。

手掛ける事業は携帯電話のソフトウェアテクノロジーである。売れる商品を探し出すために、先ず最初に考えたのは携帯電話で最も使う、或いは使われてきたアプリケーションは何かということ。パレートの法則の応用である。経営資源に限りがあるベンチャーにとって、この法則の重要性、偉大さは語り尽くせない。

ダントツに最もよく活用されている携帯アプリは「電話帳」である。「電話帳」というアプリケーションは未来も確実に存続する。その過程で生物のように進化が起こるであろう。どのような進化を辿るのかというイメージに、ビジネスチャンスが隠されている。

何事もそうかもしれないが、進化した携帯電話の未来を的確に予測する上で、似たような他の分野の歴史や事実を研究することはヒントになる。今後十年で、半導体集積技術や無線通信技術の革新により、パソコンも携帯電話に収まるサイズになると予測した。そこから、学べることは現在パソコンにあるようなアプリケーションを携帯電話向けに変形させることが確実なビジネスになるのではないかということだ。

携帯電話の場合、未来の電話帳は、パソコンでいえば、インスタントメッセンジャーのようなものに発展し、単に、電話番号を記録するだけでなく、相手の状態が分かり、メールや電話、メッセンジャー、ブログなど様々な手段で適切にコミュニケーションがとれるようになるだろう。

2002 年 2 月の創業と同時に、未来の電話帳の研究開発プロジェクトをスタートさせた。研究開発型ベンチャーでよく押さえておかないといけないことは研究開発資金をどうやって捻出するかだ。

ベンチャーキャピタルなどの外部の投資家のようなものに頼ることも一つの方法だろう。しかし、できれば自前でやりくりする方が良いと思った。なぜなら、株式公開のような余計なことを一切意識せずに、研究開発をマイペースで進めることができるからだ。独創的な研究開発を成功させるためには「マイペースでやれる環境」はものすごく重要だ。主観的には確実に成功すると信じているのだから、その方が想像を絶するくらい努力した社員らに大きく報いることも資本政策上とりやすい。社員の年齢構成も 19 〜 26 歳と若いので、何も急いで焦って株式公開でなくとも良いと考えた。

研究開発資金を捻出する際に思いついたアイデアがある。未来の電話帳なるものを構成するために必須となる要素技術を商品化し、販売するというアイデアだ。創業当時は携帯電話のアプリケーション開発環境は、コロンブスがアメリカ大陸を発見したときのように、全くの未開拓地帯だった。当時はどんなものでも創れば商品になりうるチャンスがあった。

最初に手掛けたのが、携帯電話向けのプログラム圧縮技術。大学生の頃、Z80 という CPU が搭載されたマイコン用のプログラムの構造を解析して、そのプログラムを変換し小さくする仕事で、お客さまから大変感謝され、儲けたことがあった。もう 20 年近く前の話だ。その当時のマイコン(今で言うパソコン)は主記憶が 64 キロバイトしかなくメモリの制約は大きな問題だった。その時の問題が携帯電話でも発生していたのである。

不思議なことに、携帯電話向けにこの問題に取り組んで製品化までしている会社は世界中どこを探しても無かった。今は携帯電話だけかもしれないが、将来的には情報家電も含め、膨大なチャンスがあると確信し、このソフトウェア技術を研究開発し、製品化した。競合製品が無いため、比較的順調に、大手ゲーム会社、大手コンテンツプロバイダ、大手電機メーカーなどに導入が進んでいる。勿論、このソフトウェア技術も世界中で利用可能なように開発した。現在、国内市場だけの販売である。世界市場進出に向けて、これから先が楽しみだ。

その他にも、これと同じような発想で、携帯電話向けにパソコンで言えば、Windows のようなもの、アプリケーション開発ライブラリのようなものも研究開発し、製品化している。競合が全く存在しないため、市場開拓は自力でやらざるを得ず、とても大変ではあるが、お蔭様で時間の経過と共に売上もぐんぐんと伸びている。

2004 年 11 月 18 日 : 事業を育てる

今年は 4 年に 1 度訪れる夏のオリンピックイヤーだ。そのアテネオリンピックで、数多くの日本人アスリートたちが活躍したことはまだ記憶に新しい。オリンピックで金メダルを獲得するようなアスリートたちは自分の体力、気力のピークをオリンピックの開催時期に合わせて調整するという。
会社を起してその事業を成功させる場合においても、「その事業のピークをいつにあわせれば良いのか?」という発想は極めて大切だ。そのピークに合わせて、「ヒト」、「モノ」、「カネ」など事業に必要なすべての段取り(調整)をするのである。
あらゆる事業に、「導入期」、「成長期」、「成熟期」、「衰退期」という 4 つのフェーズがある。また、不思議なことに、それぞれのフェーズの時間の長さ(期間)というものが、ほぼ均等であることを知っているのは大切だ。事業の段取りが比較的スムーズにいく。1 年の間に春夏秋冬があって、それぞれ大体 3 ヶ月で区切られるのと同じような感じ。
私の場合、これまで 3 年ごとに仕事の内容そのものを大きく変化させながらやってきた。従って、普段から 3 年毎に「ものごと」を捉える習慣がついている。よって、事業も大きくは 3 年刻みで大きく捉えて進めるのが、自分には向いていると思っている。
まだ会社を創って 3 年未満の状態なので、今の事業はその「導入期」の終わり頃にあると位置付けている。いまの事業のピークは「成長期」が終わる、3 年後と考えて、そこにピークにもってこれるようにいろいろと創意工夫を凝らしている。
インターネットの世界では「1 年が通常の 7 年」というドッグイヤーなんていうキーワードをよく耳にする。しかし、会社を数百年以上にもわたって存続できるようなものにするには、そんなに焦らずにゆったりとして事業を捉える方が良いと思う。IT ベンチャーでは少数派であるかもしれないが、逆の意味でその方がニッチを狙うベンチャーらしいのでは。できれば会社が永遠に存続し、成長、進化・発展するようにしたい。
数年後に大成功することを考えるより、数十年に渡って継続的に成長する道を選んだ方が着実であり堅実である。
「導入期」でやったことは以下の通り。

  • 1. 世界を狙える才能を持つ人材の発掘と育成

ミュージシャンも才能がなければ、優れた音楽を創れないのと同じで、商品に関しても「爆発的に売れるモノ」を開発するにはそれに適した人材が絶対的に必要である。

  • 2. 最も可能性のソフトウェアテクノロジーへの集中特化

いくら才能があったとしても、創った商品が全てヒットするとは限らない。大リーガーで大活躍しているイチロー選手にしても 10 打席のうち 6 打席、或いは 7 打席は凡退するのだから。
最初の段階で複数の商品を試験的に手掛けることは重要である。その中から最も可能性のあるにエッジを効かせて勝負を賭ける。

  • 3. プレスリリースによる認知度の向上

無名ベンチャー企業が創った商品をマーケットに広めるためには、マスコミを使った広報活動が一番効果がある。プレスリリースなどの対外的な文書作成に関しては、常に微に細に入り創意工夫を凝らしている。

  • 4. マーケティングシステムの確立

ハイテクベンチャー企業によくあることだが、営業を他社に委ねることは最初の段階ではしない方が良い。何故なら、商品の初期段階においては、必ずしも顧客ニーズが全て反映されていないからだ。使っていて不自然なところがどこかにある。直販なら、お客様といつも対話しているから、売れるように商品が自ずと育つ。

  • 5. Web サイトの構築

21 世紀はインターネットをフルに活用しきった企業だけが生き残るような気がしてならない。インターネットの威力を最大限活用して企業運営するように心がけている。

2004 年 11 月 17 日 : スタープログラマー

IBM のサンノゼ研究所の調査によると、小規模なシステム開発ですら、ソフトウェア開発者間で生産性の開きが 25 倍あるという。大規模なソフトウェア開発では、より顕著な差となるだろう。

ソフトウェアビジネスで成功をつかもうするなら、ひとりでもいいから、ミュージックシーンで売れてるアーティストのような、スタープログラマーらでチームを構成することが肝要だ。

浜崎あゆみは毎年コンスタントに年間レコードセールス 100 億円以上を記録する。これくらい売れているアーティストはごく少数である。むしろ全く売れないミュージシャンが大半である。2 者のパフォーマンスの差は無限大と言ってよいほど甚だしい。

限られた経営資源でスタートするベンチャーの場合、"浜崎あゆみ"のように売れるアーティストに相当するプログラマーの存在が輝かしい未来を決定付ける。

アップルのスティーブ・ウォズニャック、マイクロソフトのポール・アレン、サンマイクロシステムズのビル・ジョイなど、米国で巨大企業にまで成長した IT ベンチャーには、必ずといっていいほど、天才的なプログラマーの存在がある。

マイクロソフトのビル・ゲイツは、商品そのものであるプログラムのソースコードを最も重視していた。自らプログラムコードの内容をレビューしていた。それ自体が商品だからである。マイクロソフトではプログラマーの地位が高いのである。

日本のソフトウェア業界は上流志向が強い。プログラミングという仕事は定型的で誰にでもできる。システム分析やシステム設計ができる方が偉いとする考え方である。日本ではプログラマーの地位が低く、天才的なプログラマーが育ちにくい。

本当はプログラミングがしたいのに、周囲に流されて、分析者とか設計者、或いはプロジェクトマネージャーの方が地位が高いと勘違いし、肝心のプログラミングをしなくなる。

システム分析やシステム設計ができても、プログラムとして実現されなければ、絵に描いた餅だ。画期的なソフトウェアが日本から世界へ広まっていない現実は残念である。

今、携帯電話に代表されるモバイル機器は掌に収まる超小型コンピューター兼ネット端末に変貌しつつある。ハードウェア機器や通信インフラは日本が世界で最も進んでいる。モバイル機器上で無尽蔵に残されている世界のソフトウェアマーケットで成功できるチャンスでもある。

短い人生なのだから、アーティストといえるスタープログラマーとドリームチームを結成し、時代を変革したい。

スタープログラマーと共に、独創的なソフトウェアを世界に送り出す未来が待ち遠しい。

2004 年 11 月 16 日 : 及ばざるは過ぎたるに勝れり

はじめまして。

ソフィア・クレイドルの杉山和徳です。

滅多に外出しない。いつも好きな曲を聴きながら、会社で仕事に集中している。たまたまこの日記を書く機会を得た。いろんな情報を発信するように心掛けたい。

ソフィア・クレイドルという会社の紹介から始めよう。

創業して早 3 年。光陰矢の如し。改めて時の経つ速さを実感する。いろいろあった。今では事業の成長に悦びを感じることも多い。

ソフィア・クレイドルは携帯アプリ向けのソフトウェアテクノロジーを研究開発し、マーケティングする会社。例えばプログラム圧縮ユーザーインターフェイスアプリ開発環境などを研究開発してきた。

ずっとソフトウェアに携わってきた。自分の強みを活かした起業なら、必然的にソフトウェア業だった。全財産を賭けて勝負する以上、最終的には成功したい。成すべき事業の領域については、とことん考え抜いた。

ソフトウェアベンチャーで成功するための、重要なポイントっていくつかあると思う。次の 3 つが極めて重要な原理原則と考えた。

1. プラットフォームの普及

2. 世界マーケット

3. クオリティ

会社を創業した頃( 2002 年 2 月)、3 つの条件をすべて満足するものをひとつ見つけた。世界で急速に普及が進むクアルコム社の CDMA と呼ばれる次世代携帯電話のプラットフォーム BREW をターゲットにしたソフトウェア事業である。

これまでは、事業の根幹となる製品を創り、実績を積み重ねるのが主なテーマだった。2005 年からの 3 年は、世界への製品マーケティングが最大の目標だ。

創業当初想い描いていたシナリオと現実は大きく食い違う。幸い会社は存続し、時の経過と共に業績が向上している。

「人の一生は、重き荷を負うて遠き路を行くが如し。・・・」で始まる徳川家康の遺訓がある。最後は「及ばざるは過ぎたるに勝れり」で締め括られている。

ベンチャーは「ヒト」、「モノ」、「カネ」すべてがゼロからのスタート。

"及ばざるは過ぎたるに勝れり"

「弱み」を「強み」に転換できれば、ベンチャーの活路は見出される。

何もかもすべて不足している。だからこそ全員が真剣に創意工夫する。そのスタンスは人を成長させる。会社はぐんぐん飛躍する。

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