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President Blog : Sophia Cradle Incorporated

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2004 年 12 月 25 日 : Sensibility

この 1 年、主力商品をリリースアップすることなく、大幅なバージョンアップに向けて、その研究開発にステルスに没頭していた。来年の上半期には衝撃的な新商品として発表できる目処がたった。ここまで来るのに 3 年かかった。長い道のりだった。いよいよ、ワク × 2 & ドキ × 2 な新年を迎えることになる。

ベンチャーでありながら 1 年間、VC や銀行に頼らず、秘密裏にスケール感の溢れる研究開発ができた。資金繰りで奔走したことは創業以来一度もない。第 1 弾の製品 SophiaCompress(Java) がヒットしたからだ。

ベンチャーは最初のきっかけを掴めればあとはとんとん拍子でいく。ささいなことで瓦解することもあるから、何ごとも慎重に行動することも肝心ではあるが。

いま構想している携帯電話向けソフトウェアのビジネスについてまとめてみる。

今後、携帯電話向けソフトウェアの業界は 2 つの大きな課題に直面することになると見通している。それらを解決できた会社のみが大きく飛躍できるだろう。

ひとつは人の感性に響くような、新しいユーザーインターフェイス

もうひとつはムーアの法則に従って急激に進化し続ける携帯電話のハードウェアを活かす、大規模・複雑化するソフトウェアのための次世代フレームワーク。

人の「感性」に関しては、実際に様々なことを感じたり考えたりしている。その中で、以前読んだアメリカンフットボール業界で著名な鈴木智之氏の著書「勝利者 〜一流主義が人を育てる、勝つためのマネジメント〜」に興味深い話があった。


頂点に立てる者と立てない者を分けるのは何か?

それは「感性」を磨いているかどうかの差だ。

人には視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という五感があり、「感性」とはこの五感でものごとを感じ取ること。

「感性」の豊かな人はこの五感が鋭い。

「感性」が鋭ければ鋭いほど、観察力、洞察力、予知能力、決断力、判断力、責任感、向上心、克己心など、あらゆる仕事で共通して必要となる能力が強化される。

一流の音楽、絵画、風景、料理など五感を使うものに触れて「感性」を磨くことはどんな分野であっても一流のアウトプットを生み出すための条件となる。

感性や感覚について、単純に言うと、感性というものに磨きをかけることが、より豊かな素晴らしい人生を送るための方法なのだ、と改めて確認した。

感性とは、単なる感受性ではなく、物事を心で感じ、つかみとることのできる能力という解釈で、心の働きのひとつであり、すべてに繋がる原点でもある、とされていたのがとても納得させられた。

「未来の携帯電話に相応しい新しいユーザーインターフェイスを創造すること」を一つの大きな使命としている。ユーザーインターフェイスというものは、人間の感覚に関わる部分であるだけに、利用者の生活や人生の幸せや豊かさに関わる問題に繋がるのではないだろうか。

微妙なデザインの差に過ぎないかもしれないけれど、デザインというものは、これからの時代、とても大切な要素である。携帯電話のユーザーインターフェイスのようなもののデザインに関して、私たちほどこだわっているソフトウェア開発会社は珍しい。

もうひとつの「大規模・複雑化するソフトウェアをどうやって扱うか」ということであるが、これは以前にもお話ししたように、生物のメタファーを用いるのがベストだ。

人の体は、どの一部をとってしても、人工的に創り出せないくらい複雑で神秘的な構造をしている。その原理は、遺伝子情報に従って、個々のシンプルな細胞がお互いに信号を送りあって自律的に共存し機能するというものである。

ソフトウェアが大規模・複雑化したとしても、生物の細胞のように、自律的で、シンプルな「オブジェクト」と呼ぶソフトウェアの基本単位が、お互いに「メッセージ」と呼ぶ信号を送りあって動作するようなシステムをシンプルに構成すれば良い。いわゆる、「オブジェクト指向」的なアプローチである。

BREW というプラットフォームで、私たちのようなアプローチでソフトウェアを開発し発表している会社は、世界広しといえども、ソフィア・クレイドルだけだ。

これまではインフラ創りで手一杯だった。

これからは、このインフラ上でオブジェクトたちが自律的にメッセージを送り合いながら世界中を駆け巡ることだろう。

2004 年 12 月 24 日 : Communication −考察−

いまから6 〜 7 年前、総勢 170 名に達するくらいのプロジェクトを指揮するリーダーをしていた。現在より量的にスケールの大きな組織だった。

当時、いろいろと苦い経験を味わった。さまざまな貴重な教訓も学んだ。なかでも、組織が急拡大するにつれて、コミュニケーションをどうやって効率化するかについて考えさせられることが多かった。

海外展開を視野に入れてソフィア・クレイドルというベンチャーを経営している。現在は十数名の小規模な組織だが、もっと大きな組織になっても通用するようなコミュニケーションのインフラを整備しておきたい。

備えあれば憂いなし。

いまの段階から将来に向けて磐石なものを構想しておきたい。

スケールの大きな仕事をしようとすれば、多様な才能を持つ、多くの人たちとのコラボレーションが必要となる。有能な人材をたくさん集めることができれば、それだけ大きな仕事がこなせる。

プロジェクトに関わる人が増えてくると、同時に、コミュニケーションのボトルネックというものが生じてくる。これは成長する組織が避けて通ることのできない道でもある。

大規模な組織では、人と人とのコミュニケーションをどうやって最適化するかということが厄介な課題となる。ごく普通の当たり前の話かもしれない。でも、これを本質的な問題として受け止めて、その対策のために、具体的な行動へと繋げている経営者は意外に少ない。

大規模な組織になった時、その運営の効率を最適にする術とは――「いかにして無意味なコミュニケーションのための時間や手間を減らすか」なのである。

実際に作業をする時間よりも会議の方が長いというのも、あちこちのプロジェクトで日常茶飯事のことのようだ。言うは易しであるが、解決するためにはどうしたらいいのだろうか。これは次のような簡単なたとえ話から、示唆を得ることができると思う。

日本人とロシア人がいてコミュニケーションをとろうとしたとする。でもお互いに相手の母国語を知らなければ、先に言語を学ばなければならないということになる。そのため肝心のコミュニケーションに辿り着くまでに、相当の時間がかかってしまう。

お互いに共通の言葉として英語が分かるのならば、直ぐに本論に入ることができる。つまり、両者が、コミュニケーションに必要なバックグラウンドを共有していればいるほど、そのコミュニケーションは短時間でありながら最高の結果に近づいてゆくことになる。

仕事の場合も、スタッフ同士が、必要な知識や智慧、ノウハウなどについて、多く深く、知っていればいるほど、無意味なコミュニケーションの量が減り、仕事はそれだけ上質なものとなる。阿吽の呼吸という表現でよくいわれる。

ベンチャー企業であれば、日々の業務に追われてしまって、物事や相手のことを知る機会や時間が減りがちである。それに注意しなければならない。具体的な仕事よりも勉強や研究や懇親のため、最初は仕事のペースが落ちてしまう。

だが、急がば回れということで、まずは仕事の基盤となるものを学ぶことを第一にしたほうがよい。指数関数曲線を描いて成長するための重要なヒントである。

そのために、企業理念、ビジョン、そして行動指針がある。

2004 年 12 月 23 日 : パンドラの箱

ギリシャ神話によると、パンドラは神々によって創られた最初の人間の女性だそうである。

パンドラは地上に降りるときに、神々からの贈り物である「箱」を持たされた。「箱」を開けることは許されていなかった。ある日、パンドラはその扉を開けてしまった。そのとたん、この世に存在するありとあらゆる災い、病気や不幸なんかが飛び出してしまったという。

パンドラが慌ててその扉を閉じたところ、その箱には一つだけ残されたものがあった。

それは「希望」だった。

パンドラの話で、感慨深いのは、箱には「希望」が残されていたこと。

「ベンチャー起業」は、ある意味では、「パンドラの箱」を開けるようなもの。どんな大企業で勤務していようと、サラリーマン生活を送る者の多くは、「ベンチャー起業」という「パンドラの箱」を開けてみようかと思うことがある。

ただ、それを開けたとたん襲ってくる、ありとあらゆる困難にどう対処していいか、分からないし、不安だから、ためらっている人が大半ではないだろうか。

「パンドラの箱」を開ける決心をしたのは、そこに残された「希望」というものの存在に、全てを賭けたからだ。

確かに、誰にも頼ることはできず、守られているわけでもなく、自分を信じ、自分を頼っていくしかない。けれども、事業をやっていて次第に分かってくるのは、「希望」というものがだんだんと大きくなってくるということだった。それを「感性」で感じ取れるのは生きている上で大きな喜びだ。

ベンチャー起業は人、資金、知名度、技術力等などすべてゼロからスタートするわけだから、既に長年その業界に存在している企業と互角に渡り合っていくのは並大抵のことではない。

「希望」を信じて、一歩一歩着実に成果を積み重ねていけば、知らないうちに驚くほどの大きな実績となっている。

最初はまったくのゼロだった。

今では少しは「ソフィア・クレイドル」という社名を知っていたり、聞いていたりする人がいる。有難いことに製品も売れている。尊敬でき、超一流といえるスタッフに囲まれている。ハードの設備、ソフトの環境も創業時よりもかなり良くなってきた。立派に自社のホームページも存在する。

何も無かった創業当初からすれば隔世の感がある、そう思う。

創業時は吹けば飛ぶような、泡のような存在が、今では立派に自立していることは、これまでの結果として評価できる。

全ては「パンドラの箱」に残された「希望」を信じた結果であり、この姿勢を堅持する限り、ベンチャーは弛まなく成長し、飛躍していく。

そんなときめきを予感する今日この頃。

2004 年 12 月 22 日 : 携帯の未来

携帯電話の将来展望】( Sun Developer NEWS より)

世界最初のコンピューター「ENIAC」が世に登場したのは1946年のことです。あれから、半世紀にわたる時を経て、コンピューターはあらゆる側面から進化・発展を遂げてきました。

エニアック−世界最初のコンピューター開発秘話−』(スコット・マッカートニー著)によると、「ENIAC」は高さ9フィートのキャビネット40個に、1万8千本近くの真空管から構成され、床面積1800平方フィート、重量30トンという巨大なコンピューターでした。動かすには174キロワットの巨大な電力が必要で、コンピューターが動作していない時でさえ、その電気代は1時間あたり650ドルもしました。また、「ENIAC」はひとつの弾道を計算するのに30秒もかかりました。

しかし、現代のスーパーコンピューターでもってすれば、その弾道計算に必要な時間は3マイクロ秒以下です(マイクロ秒とは100万分の1秒)。今のコンピューターは、「ENIAC」と比較してその処理速度は1000万倍以上です。そして、Javaが搭載された携帯電話でその弾道を計算したとしても30秒はかからないでしょう。今後、携帯電話の処理性能はますます加速度を高めて、予想もしない方向に更に、進化・発展を遂げるでしょう。その未来を予測しつつ、ハードウェアソフトウェアの技術開発をする仕事はとても興味深いものです。今や、50年前には30トンもの重量を有するコンピューターを越える処理性能が、ポケットに入れて持ち運びできる携帯電話の中にあるのですから。

昔、「マイコン」と呼ばれていた今の「パソコン」の原点である「マイクロプロセッサ4004」(日本のビジコン社製)が、初めて登場したのは1976年のことです。これには0.6MIPSの計算能力があり、これは「ENIAC」と同等の性能であったらしいのです。ところが、当時は、世界最大のコンピューター会社であるIBM社を含め、まさにこの「マイコン」が、今日の「パソコン」として大きく進化・発展するという無限の可能性を予見できた人はほとんどいませんでした。

その意味合いから、今は、30キロバイト、100キロバイトなどのメモリ制約や処理性能の面で、パソコンと比較すれば大きく見劣る携帯電話ですが、実は、何十年か前の大型コンピューターに匹敵するCPU性能がなんと今の携帯電話の中に存在しているのです。その驚くべき事実をよく認識・理解し、留まることない数々の技術革新により今のパソコンのCPU性能に匹敵する処理性能が、将来の携帯電話に搭載されるものと考えて、未来の携帯電話の姿を想像することがとても大切ではないかと思います。

コンピューターの未来を占う上で大きなヒントとなるのが、IT技術の発達により、コンピューターがそもそも開発されたきっかけとなった計算能力を、今や必要としなくなったのだという課題をよく理解することでしょう。現在、コンピューターで大きな課題となっているのは、『使い易さ』、『便利さ』、『快適さ』、『面白さ』など、利用者サイドにとっての、日常に即してのより切実で高度な要求に向けての解決策ではないでしょうか。

20年前は余程のマニアで無い限り、個人で「マイコン」を購入し、その利用を楽しむということはありませんでした。しかし、近年のハードウェア技術の急速な発達を梃子にして開発されたWINDOWSブラウザのような、主として「ユーザーインターフェース」を中心とした使いやすいソフトウェア技術の登場により、子供や年長者やあらゆる方がパソコンを操れる時代となりました。

しかし、「パソコン」という外見的にも技術的にもとっつきにくいイメージがあることが、かえってある種の障壁となってしまい、一部の方たちには利用がためらわれる傾向にあります。しかし、今後、コンピューターというものは、より『人間の視点』に立つことを前提にしたプログラミングがなされることにより、今の携帯電話のようにその中にコンピューターが内蔵されていることをまったく意識させないものに変化するでしょう。私たちは、あたかもテレビ、書籍、文房具、電話などの日用品のように全ての人が自然にかつ自由にコンピューターを利用するという大きな潮流の中にあるのです。

これを達成するには、ユーザーインターフェース、人工知能、小型化、無線通信など今まで以上に高度なコンピューター技術の更なる技術革新が必要とされるでしょう。例えば、何年後かには、今の最新式パソコンを上回るコンピューター性能や無尽蔵に利用できる高速無線回線、ハード機器間の無線接続などが携帯電話に実現されるようなことをイメージアップすれば、現在と大きく異なる携帯電話の利用シーンが浮かんでくるかもしれません。

(以前サン・マイクロシステムズさんのサイトに寄稿した文章より)

2004 年 12 月 21 日 : Imagination

日頃お世話になっている方々から励ましの言葉をいただく。とてもありがたく感謝している。

ある方は「世界ナンバー 1 を目標にせよ」と、また、ある方は「大企業に少しでも近づくように」とおっしゃる。

この 2 通りの発言には、似て非なる大きな違いがあると思っている。

「大企業に少しでも近づくように」という発想で企業経営をしていれば、いつまで経っても零細企業であり続ける確率が高い。むしろ、既存の大企業を凌駕するくらいの勢いで、常日頃から大志を抱いて経営に励むことのほうが、永遠の企業へと近づける方法ではないだろうか。

思いもよらない幸運というのは、稀なことだからそういうのである。日常で起こっているほとんどのことは自分の思いの範囲内かもしれない。思いや夢、そしてビジョンを大きく描くことができれば、それだけ達成できることも大きなものとなる。

想像力というものは、経営者にとって極めて大切なスキルである。

見えないものをもう既に実現しているくらいに思いを描くこと。

イメージをビジョンにすること。

〜 ご存知の方も多いと思うけれど、これは、最近読んだ素朴なストーリーであるゆえに考えさせられた本の例である 〜

最近、IT ベンチャーの話題を、新聞、雑誌、テレビなどで知る機会が多く、様々な波があるようだ。ほとんどのネットベンチャーが国内での活動に終始し、世界的な視野でものごとを捉えていないんじゃないかと思う。

Yahoo! や Amazon ような海外の有力ネットベンチャーが、鎌倉時代の「元寇」のように日本に進出してくることは間違いない。その時、日本のネットベンチャーが、どのように防戦に回るのかが見ものである。

ソフィア・クレイドルの業種はソフトウェア業であり、最初から世界を舞台にしていないと結局は生き残れないので、それを前提にして経営をしている。開発している製品が、世界中の人々に評価され、支持され、愛されるようにと。

厳しい局面にも遭遇するだろう。

厳しさの中で育っていくことができれば、世界的な事業だから、正しく地球規模のスケール感に満ちたワクワク&ドキドキの仕事となろう。

いまはその夜明けなのかもしれない。

2004 年 12 月 20 日 : Kaleidoscope

世界は抽象化を極めれば、四次元の万華鏡のように不思議な魅力に満ちた景色になるのかもしれない。

「過去」、「現在」、「未来」の時間の流れと、「ヒト」、「モノ」、「カネ」の経営資源からなる空間の構成との関連を鮮明にイメージすることは経営者にとって欠かせない。

過去から現在への時の流れから未来の空間を予測できるかできないかで、その経営する企業の命運が大きく左右されるといっても過言ではない。

時間の流れに伴う空間の連続的な変化を見通すセンスを磨くためにはどのようにすればいいのだろうか。

経営的な観点、特に、会社を創リ出すということに絞って述べてみたい。

普段から心掛けているのは、音楽を聴くこと、それから絵画を観ること。

音楽を聴くことで、時間軸に沿ったリズミカルな感性を磨ける。歌には、簡潔な詩的表現に込められた“思い”とリズムのシンクロ二に感動も発見できる。強弱をつけたり、ペースを速めたり、遅くしたりと名曲に匹敵するように行動できれば、自然な流れで進めるんじゃないかと感じる。

名画の鑑賞では、な色合いとかオブジェクトの配置といったものの感性を磨ける。誰が見ても美しいと言われるような良いものができればいいし、プロジェクトに関わるスタッフや必要な資源を、どうやって適材適所させるか。それによって結果はまったく違った風に変化する。ほんの少しの断片によって景色が変わる万華鏡のように。

経営は、時間軸上に展開される事業の空間をどうやって最適に制御するか――である。プロデュースする、コラボレートするということである。

映画の場合、映画のシーンに合わせて、それにフィットする音楽が自然に醸し出されるような感じで、時間と空間をどうコントロールできるかということに似ている。

感性を磨く上で、音楽や絵画といったような芸術から感じ取り学べる要素は非常に多い。

日本の教育では、芸術以外の受験勉強が中心になっていることが多い。最近思うのは、芸術から得られるものが役立っているということ。名画、名曲、と言うものの、判断も人それぞれであるのかもしれないけれど、シンプルに考えて、まず自分が好ましいと感じるものを、大切に押さえていけば間違い無い。

京都には 1000 年以上にわたって生き残ってきた、音楽、建物、庭園、絵画、古文書など数多くの遺産がある。ほんの少し足を伸ばしただけで美しい自然、それも、昔ながらのナチュラルなものと人の手の粋を凝らしたものがある。

絢爛豪華とわびさびと、雄大な美とささやかな美とが共存している。ここには、時間と空間を想起させるありとあらゆる美しいものが有る。

願わくば、過去の遺産や伝統を受け継いで、京都の会社である、と名乗ることができるように会社を育て上げたい。

2004 年 12 月 19 日 : ステルス

ミハエル・シューマッハを擁して F1 レースで連戦連勝のフェラーリ

カローラに代表される大衆車でその名を世界に知らしめ、自動車販売では世界第 2 位となったトヨタ

派手さ&クールさならフェラーリ。

ビジネスという観点ならトヨタ。

多くの人が見かけが華々しいものを好む。自動車の例で言えば、トヨタよりはフェラーリがカッコいいと思う。カッコ良さとビジネスのスケールは必ずしも一致しない。研究開発では画期的な成果でも、消費者には高嶺の花でビジネスがブレークしないこともある。

トヨタや松下電器産業など、消費者にコストパフォーマンスに秀でた製品を開発し提供して、発展した企業の戦略や戦術から多くを学べる。

携帯電話のソフトウェア業界をどのように俯瞰すべきかをまとめてみる。

今、携帯電話はブロードバンドで、世界共通の 3G 携帯に切り替えが進んでいる。NTT ドコモの戦略に顕著なのだが、3G 携帯電話ではオペレーティングシステムLinuxという、現在、サーバー用途で利用されているものが採用されたりしている。(NTT ドコモが採用している 3G 携帯電話向けのオペレーティングシステムにはSymbianOS もある。これも高性能な携帯電話向けのものだ。)

もともとサーバーで使われていたものである。大掛かりな研究開発もできる。だから多くのハイテクベンチャーはそちらに向かっている。それを動作させるには、高価なハードウェアが必要である。結果的に、出来上がる携帯電話は高価なもの、或いはスピードの遅いものとなってしまう。

値段が高ければ、マーケットに流通させる局面で、消費者への販売には無理があり非現実的なのである。世界マーケットで考えてみて欲しい。日本ほど豊かな国は、 5 本の指で数えるくらいしかない。

日本人でも高いと思う携帯電話は、世界で普及する状況は望めない。それがLinux携帯電話の現状の姿ではないだろうか。

携帯電話向けソフトウェア事業を展開する上で、どのプラットフォームを選択すべきかをこのような実態から定めた。

ハイエンドな携帯電話よりもハードウェア的には少々見劣りするかもしれないけれど、安価な携帯電話でも、ソフトウェアテクノロジーを駆使することで、高級な携帯電話に匹敵するくらいの性能を発揮させることができる。それがクアルコム社が自社の 3G 携帯電話向けチップと共に提供している BREW である。

創業した年は、KDDI はまだそれを正式採用するとは決めてなかった。冷や汗ものだったけれど、必然的にこうなるであろうという予測はついていた。

心強かったのは、クアルコム社は 3G 携帯電話の CDMA という技術を独占的に有している会社だったということだ。

世界中に広く普及するであろうCDMA の 3G 携帯電話のプラットフォームを発見して、それに向かって研究開発を積極的に進める会社が皆無に近かったことも、追い風になった。

値段が安いとはいっても、技術的な観点からすれば、BREW というプラットフォームは昨日もお話した ARM という携帯電話の CPU をダイレクトに扱えるという、とても興味深い一面を有するものであった。これまでの一般の携帯電話向けソフトウェア開発会社ではなし得なかった仕事ができるオープンな環境でもあるのだ。

最近のソフトウェアの開発といえば、JavaVisual Basicなどの高級プログラミング言語が常識だ。

ARM というプラットフォームでは機械語という 2 進数でプログラミングすることによって、携帯電話の性能を極限まで引き出せる。この仕事は誰にもできるわけではなく希少価値があり、技術を追求する前向きな技術者にとっては、非常に楽しい仕事なのである。

偶然にも、技術的な興味も十分に満たされ、競争も少なく、将来的に世界中に大きく拡がる市場を発見することができて、やっとその成果が収穫できつつある今日この頃である。

1 年後、NTTドコモも BREW と呼ばれるプラットフォームを採用するようだ。

ハイテクベンチャーでは、テクノロジーの研究開発競争は熾烈である。経営戦略として、激しい戦いから逃れ、戦力の消耗を避けつつ、こっそりと隠れて、いつの間にか拠点を全て制覇する。いわばステルスな行動をとる作戦が功を奏する場合が多い。

2004 年 12 月 18 日 : 魔法のエンジン

道端に 1 万円札が落ちていたとする。大半の人はその 1 万円札を拾う。1 円玉であったなら、ほとんどの人は拾わずに素通りするだろう。

逆説的なようだけど、ビジネスでビッグチャンスを掴むためには、1 万円札よりも寧ろ 1 円玉の方を拾う。そして、その1円を大切にし倍々に増やすことを考えるのがよい!

1 万円札を拾うと、人は増やそうという発想よりも、拾った 1 万円を無駄に使ってしまう傾向がありはしないか?1 円玉を選択するなら、その時点ではそれだけでは何もできない。増やすには何らかの思考が必要になってくる。

お金というものは、何も考えずに使ってしまえばそれで消滅してしまう運命にある。お金を増やすエンジンを手に入れることができれば、永遠に無限にお金が産み出せる。

お金には不思議なところがある。

ゲーム理論的に、ビジネスで大事なのは、どうやってそのお金を産み出すエンジンを構想するかだ。1 円しかなければ、増やさない限り生きていけない。必然的にそんな発想になる。

2 ヶ月経たないと 2 倍にならないとしても、昨日の日記の話に書いたように、継続して 2 ヶ月毎に倍になれば 5 年後には 1 円は 10 億円になっている・・・計算では。そのペースでいけば、10 年後には天文学的な金額になっているだろう。

最初は元手が少ないので増えるペースが遅い。諦めて脱落する人たちも多い。だからレースに参戦しているだけで、知らず知らずのうちに最終的に勝利していたりする。

目先のお金に囚われず、長期的な成功を得るために、1 円玉を拾うような選択をしてきた。最初は事業曲線は水平線を描いていた。徐々に傾きが上向くようになってきている。

確かに苦しい時期もあり、その度にさまざまな事情で離れてゆくスタッフもいた。創業以来残っているスタッフは、試練に耐えてきただけに、安定した企業で働いていた場合よりも、1 桁以上も成長して立派になっている。

「 1 円玉を拾う」という選択には別の意味もある。

それは何か?

目に見えない魅力がたくさん隠されているのに、見かけが地味過ぎて、好んで選択する人はほとんどいない。

最初から強力なライバルが全くない。喩えるなら、多くの人は、渋滞する道路で目的地を目指すのに、空いている逆の道を快適に自分の好きなペースで前に進むような感じだ。

IT 業界で言えば、ブログSNSグループウェア検索エンジンのようなシステムは、なんとなく派手で儲かりそうな感じがする。多くの人が跳び付いてしまう。

そこでは熾烈な激しい競争が繰り広げられる。マイクロソフトと正面切って競争して勝つのは至難の技だ。

混雑した息苦しいところは避けたいので、ARM というようなプロセッサで機械語のプログラミングをしたりする方を選択している。都会の大きな本屋でも ARM というプロセッサのプログラミングの書籍を探し出すのは至難の業。それくらい、いまは地味な世界である。

100 人中 99 人は ARM ってなんのことか分からないと思う。実際にはほとんどの人が日常生活で利用しているにも関わらず。

ARM は、世界中の大半の携帯電話に採用され搭載されている。パソコンで言えばIntel(インテル)のような存在だ。携帯電話の心臓部分に相当するものである。数の上では、インテルの CPU 以上に世の中に普及している。ほとんどの人はこんなに大きなマーケットがあるのに入ってこようとしない。

インビジブルだからである。

本当のビジネスチャンスはこんなところにあるものなのだ。

今、ユビキタスコンピューティングのビジネスとはこんな感じで展開される。

ARM を研究して、任天堂ファミコンのゲームが au の携帯電話で動作する成果も得られている。 

インビジブルな魅力溢れるマーケットで、こういうエンジンの仕組みを考え出す辺りにベンチャーが飛翔できる道が隠されている。

2004 年 12 月 17 日 : ムーアの法則 −流線型の軌跡を描く−

ベンチャービジネスをする以上、会社に関わる全ての要素が指数関数曲線を描いて成長することを願っている。皆が幸福になるために、どうすればその成長を達成することができるのかという戦略を策定し、実践するのは経営者としての最も重要な役割だと思う。

指数関数のカーブを描くには、事業領域を定める時に、指数関数の原理原則で業界そのものが動いている領域を探し出せば良い。

いまの携帯電話向けソフトウェアビジネスを創める前に着目した要素は、i モードが発表された 1999 年頃からムーアの法則(Moore's lawが携帯電話にその舞台を移して働きだしているという前兆だった。

ムーアの法則とは、「半導体の集積密度は 18 ヶ月で倍増する」という法則のことで、米国インテル社を創業したメンバーの一人、ゴードン・ムーア氏が発見した。携帯電話の場合、集積密度が毎年倍になるくらい急激なスピードで、ハードウェアは進歩している。

ベンチャーにとって毎年倍増のペースで業界が成長するのは非常に有難いことなのである。何故なら、大企業が参入をためらうような、最初は無視できるくらいニッチな市場も、ほんの数年で巨大な市場へと成長してゆくからだ。

指数関数曲線を描く」とはどういうことなのか説明してみよう。

例えば、最初は収入が 2 円でもそれが日々倍増すれば 1 ヶ月後にはいくらになるか即答できるだろうか。

実際に電卓で計算すると次のようになる。

     1日目:          2円
     2日目:          4円
     3日目:          8円
     4日目:         16円
     5日目:         32円
           …
    10日目:       1,024円
           …
    15日目:      32,768円
           …
    20日目:    1,048,576円
           …
    25日目:    33,554,432円
           …
    30日目: 1,073,741,824円

5 日目の時点では収入はたった 32 円だったのに、その後、数字の伸びが急激に増えて 1 ヵ月後にはその収入は 10 億円という規模にまで膨らんでいる。実はインテルマイクロソフトオラクルもすべてこの法則の波に乗って成長していったのだ。

これは数字の話であるけれども、偉大な「ムーアの法則」が、一種の超小型コンピューターと見なせる携帯電話の世界でも確かに働き、その波に乗ることは不可能ではないと信じて事業を展開している。

この事業はまだ始まったばかりなので、上の例でいえば、いまは 2 円とか 8 円とか 32 円の程度の市場でしかない。しかし、世界中の全ての人々が携帯電話を持つようになれば、世界の人口は 60 億とも 70 億ともいわれているだけにその市場は大きい。だが、世界で携帯電話を所有する人口が指数関数的に増加をするとは考えられず、ある一定の有限な飽和点に収束することになる。

けれども、1 台の携帯電話の中に入っている半導体に着目すれば、上で列挙した数字の如くその集積度が高まる。従って、今後、たくさんのコンテンツやアプリケーションをインターネットからダウンロードし、無尽蔵に記憶させることができるようになると考えることができる。これから 10 年間は急激な勢いで、携帯電話にネット配信されるコンテンツやアプリケーションの市場が急成長すると見通している。

以上のような目論見で、次世代携帯電話にインターネット経由でネット配信される、期待を膨らませてくれるような、次世代のコンテンツやアプリケーションを、簡単に、瞬時に、開発できるツールを提供し、個々の携帯電話のメモリに保存されているコンテンツやアプリケーション 1 個あたりに料金を課金するビジネスモデルを展開しようとしている。

現在、世界市場には 15 億台の携帯電話が普及している。3 年後には 25 億台以上にまで普及台数が増える見通しだ。「ムーアの法則」によれば、携帯電話 1 台あたりに記憶可能なコンテンツやアプリケーションの数も、年々指数関数的に増え続ける。

要するに指数関数曲線の波を捉えることが最も重要である。

2004 年 12 月 16 日 : ダイヤモンドの原石

ダイヤモンドの原石は時間をかけて磨かれることであの眩い輝きを放つ。ベンチャーというものはダイヤモンドの原石を発見し、それに磨きをかけてゆくプロセスに似ている。

米国オラクル社創業者、ラリー・エリソン氏も発言しているように、「いまは誰も気付いていないが、将来的に世間の脚光を浴びるであろうことに積極果敢に挑戦する姿勢」こそが次の時代を担うリーダーたちに必要とされる資質である。過去に偉大な業績を遺したリーダーたちの経歴を研究すれば、それがよく分かる。

世の中を観察していると、その逆を突き進んでいる人たちがとても多い。既に有名になっていたり、流行っているものに飛びつくという具合に。自分の人生がそんなことに左右されるとすれば、後悔することも多いかもしれない。

いわゆる一流といわれる大学や会社に入ってしまえば、なんとなく将来約束されたような安心した気分になる。努力をするのは入るまで間だけという人が多い。大抵の人は、自分の未来を、安定しているけれども発展や面白味の薄い状態にするために安定しているかに見える組織を目指す。

大企業に在籍していた頃に痛感したこと。大半の社員がそういう気持ちで働いている。だから時代を変革するような気概といったものがほとんど感じられず、ワクワク、ドキドキする気配すらなかった。10 年後、20 年後、30 年後の安泰した自分をはっきりとイメージできるから、大企業で働いているという人がほとんどだった。

それで何が起こるか?

本来は予想がつかないはずの未来を、主体的に創造する人が誰もいなくなり、最終的には衰退してしまうという流れ。ローマ帝国モンゴル帝国も、あれほど巨大だった帝国もいまや存在しない。他者を頼りにして、自分の生きる道を他者に委ねてしまう人々が増えるに伴い、組織は崩壊してゆく。

いまの日本では、戦後の高度経済成長期に大きく発展を遂げた大企業の多くがそのような症状を呈している。今後の行く末がとても危惧される。山一證券、ダイエー、UFJ 銀行などは氷山の一角に過ぎない。これから数十年のうちに、多くの有名大企業が次々と倒産したり、整理統合されたりしてゆくことになろう。

歴史を振り返れば、巨大な組織が崩壊するときには必ず新たなる新興勢力が出現し、それまで牛耳っていた旧勢力に取って代わってきた。そして新しい文明、文化が出現した。だから、このような混沌としたご時世のなか、ベンチャーは、旧態依然とした組織に代わって、新しい時代を切り拓いてゆく使命を担っている。

今は視界には見出せない。でも時の経過と共に姿を現すだろう偉大な何かを求めて励むということは、やりがいのある仕事だ。見えないものを見えるようにするというのは、魔法のような話だけに、それを現実とするには、ひたむきな訓練や努力が必要である。

ダイヤモンドの原石に輝きを与えるような仕事を目指したい。そこに人生にとって最も貴重な何かがありそうな気がする。

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