2005 年 10 月 19 日 : コンセプト
ソフィア・クレイドルで創っている製品やサービスのイメージを分かりやすく表現するのに苦心する。パズルとしてそれが解けたときに爽快感を味わう生活を送っている。
2005年11月から世界マーケットを対象にして"SophiaFramework"という製品の販売を本格的に開始する予定である。その時、インビジブルなソフトウェアはどう表現すればよいか。製品が売れるかどうか。それはコピーライティングのメッセージに左右される。
"SophiaFramework"は携帯電話向けソフトを開発するための一種の言葉と見なすことができる。携帯電話を言葉を理解する機械であると想定しよう。ソフトとは携帯電話という機械に思いの動作をさせるために言葉で表現した文章と見なせる。
仮に携帯電話が英語と日本語の 2 種類の言葉が分かるとして携帯電話に話かけてみる。この BLOG を読んでいる生まれも育ちも日本の方ならば、日本語を選択して話しかけるだろう。何故なら、意識することなく直感的に自由自在に日本語を扱えるからである。
それではなぜ私たちは日本語を無意識に思うまま自由に操れるのだろうか。答えは簡単だ。日本で生まれるとすると、ずっと日本語を読んだり聞いたり話したりしているからである。いくつものイメージや概念が知らず知らずのうちに言葉と一体になってパターン化し心のなかにインプットされているのだろう。生活シーンで英語はそんな風に接していないので、直感的に言葉がポンポンと浮かぶようなことは少ない。
日本人が日本語を、英国人が英語を直感的に扱う雰囲気。携帯電話向けソフトの業界でそんな空間のようなものを創造した。それが"SophiaFramework"のコンセプトである。携帯電話向けソフトを開発するためには、最初に携帯電話特有の制約に纏わる数々のテクニックを熟知してその壁を乗り越える必要がある。
PC でソフトを開発していた時と同じような感覚でプログラミングできるならば、すんなり携帯電話向けソフトの開発もできる。他に手掛けているものは世界に誰もいない。それが最大のビジネスチャンスだった。
現在、"SophiaFramework"が前提とするプラットフォームは携帯電話。未来は iPOD でも PDA でも PSP でも、そして PC やサーバーですらかまわない。多種多様ないろんなプラットフォーム向けのソフトを同じ言葉で同じ感覚で直感的にプログラミングできるようにすること。それがこの製品の着地点のイメージでありビジョンだ。
2005 年 10 月 19 日 : 世界戦略
マイクロソフト製品で普段よく使うのはWindows、Internet Explorer、OutLook、Word、Excelというたった 5 種類のソフトでしかない。にも関わらず、マイクロソフトは世界最大のソフト企業である。その理由は世界中の人びとがその限られたソフトをいつも使っているからである。
ソフィア・クレイドルは少数のスタッフから構成される組織である。研究開発できる製品の種類や数も限られる。ソフト企業が成長するための基本は、たとえ種類は少なくとも自社のソフトをネット経由で世界中に流通させることであるという仮説を立てた。国内だけでもソフトを販売するのは大変だ。だから世界に販売しようとするのならば逆に製品の種類を絞るというのが正解ではないかと考えた。
そんな背景もあって、ソフィア・クレイドルでは創業した頃から英語版の Web サイトを用意し世界に向けて情報発信している。そして海外から注文が来てもネット経由で製品をオートマティックに瞬時に出荷できる体制を整えつつある。ネットがあるからこそ成立するビジネスモデルである。少数でやろうとすれば必然的に製品の種類を絞らざるを得ない。結果的に最善を尽くしたビジネスが展開できるというシナリオなのである。
あまり外出しないかわりに研究や勉強も兼ねてベンチャーのサイトをヴァーチャルに訪問する機会は多い。Web サーフィンしながら思うのは英語版の Web サイトを提供しているベンチャーの少なさだろう。感覚的な数値ではあるが、1 〜 2 %くらいの確率でしか存在していないのではないだろうか。
客観的には国内、そして海外という戦略が常道かもしれない。けれども、そんな事情があるからこそ、最初から海外マーケットをも視野に入れて事業を展開するというアプローチもあり得ると思う。ある意味ではニッチ中のニッチな、正統派ベンチャー戦略ともいえるかもしれない。
現状のネットビジネスでは、想定するキーワードにて Google, Yahoo!, MSNなどに自社サイトが上位にランキングされることが生命線ともいえよう。ローマは一日にしてならずともいう。同じように海外の検索エンジンにて自社サイトが上位にランキングされるにはそれなりに時間がかかる。
直ぐに結論がでるものでないかもしれない。それ故に、経営資源が限られるベンチャーにとっては目先の現金に結びつかない海外 Web サイトは敬遠がちになるのだろう。でも海外マーケットを視野に入れるのならば、最初から、数年後全世界に製品をネット経由で全自動販売しているイメージと、そこに至る道筋を鮮明に思い描いてビジネスをすること。逆説的ではあるけれども、それがゴールへの近道であると信じた。
2005 年 10 月 19 日 : S( n+1 ) > S( n )
仮に時刻 x における企業の総合的な指標があるとして、それを S( x ) としよう。企業が永続するには究極的に全ての n に対して
S( n+1 ) > S( n ) n = 0, 1, 2, 3, 4, 5, ・・・
が成立するように心がけて経営すれば良い。
関数 y = S( x ) がどこまでも単調増加の軌跡を描くことを目標にしている。勝負に出ることである時刻 t から時刻 t + 1 に移り変わる瞬間に S の値をジャンプさせることも狙えると思う。その見極めこそが経営者のセンスともいえる。
肝心なのはその勝負の内容ではないだろうか。自然の流れに逆らって力まかせのスタイルで成果をあげる道もあればその逆もあるだろう。老子や荘子の思想を学んでいるせいかもしれないが、どちらかと言えば自然に任せてうまく回る経営を理想としている。
大切なのは、どうすれば時代の潮流に自然に乗れるかということだろう。大きなジャンプを捉えるには断層のようなものを正確にきちんと読み取れるかどうかが重要である。それさえ間違えなければ企業の経営というものは安泰である。それこそが経営者に課せられた最大の使命かもしれない。
それはインビジブルな世界であり難航を極める。しかし感性を研ぎ澄ませることで道は拓けると信じている。
2005 年 10 月 18 日 : 営業戦略
トップセールスと称されるスーパーマンもいるが、一般に営業ほど生産性が低く不安定な企業活動もないのでは、と常々思っていた。ベンチャーは社長が先頭に立って精力的に営業活動を展開すべしと指南するコンサルタントも多い。
実際、世の中の傾向としてよく見受けられるのが、社長自ら現場に出向き営業活動を推進する姿である。さすがに創業初年度は経常黒字を死守するためにそんな風に営業する日もあった。
次第に分かってきたのは、社長が営業活動する限り社長の営業力以上に売上が伸びるのは難しいという仮説であった。普通のレベルで営業をこなせるとは思う。しかしそれ以上に自分が目指したい仕事が他にあった。時代の先を読み、それに基づいてシステムを構想し計画し実現するというような類の仕事である。
たとえ私がいなくとも何十年にも渡ってオートマティックに通用するビジネスモデルを構想しシステムとして実現すること。長期的な視点に立てば、目先の現金を追いかけるよりも、このアプローチが先決であると考えた。
創業3年目からは営業部を解散し、社としての営業活動はゼロとなった。その分、スタッフが持っているノウハウをできる限り Web のシステムとしてプログラミングした。現在も進行中ではあるが、ありとあらゆる創意工夫を凝らした結果、営業活動をしなくとも Web 経由で世界中から問い合わせや注文が自動的に入ってくるようになった。
インターネットというチャネルを通じて、これなくして築けなかったお客様との関係が時と共に深まり増えている事実に不思議さを感じる。営業解散という宣言をしなければ、今とは違う展開になっていたことは想像に難くない。
ベンチャーにも関わらず、営業活動をしないというコミットメントには一種の勇気が伴うものである。けれどもそういった決断から新たなる活路が拓かれるのも事実であり、ベンチャー的な行動として評価できると思う。
営業をしなくても十分に回るシステムを創った。ソフィア・クレイドルの企業活動の生産性は高いほうではないだろうか。完全週休二日制であるし、休日に出勤する者、徹夜して働く者は誰もいない。それに乗じて、受注、出荷、サポート業務のコンピューターによる自動化もいま進めている。
全自動洗濯機みたいにコンピューターとインターネットを用意するだけで、商品が自然に売れる仕組みを考案し、システムとしてインプリメントしようと心掛けた。簡単な仕事ではない。けれども、そういったことができるんだという思いから何ごとも始まる。
営業のために外に出向く必要がないということは、それだけ余分に物理的な時間と精神的な余裕があるということを意味する。時間は地球上の誰にも平等に与えれる資源である。時間という限られた経営資源をどうやって有効活用できるかで運命が決定付けられるとも思える。
2005 年 10 月 17 日 : 興亡
最近、旺盛な資金調達力を背景にした M & A が活発である。買収される側が東証一部上場の大企業の場合マスコミはその話題で活況を呈する。
世界でも有数といわれる大企業に所属し、弱小の零細ベンチャーからスタートした身の上なので言えそうなことがある。
ベンチャー起業家の中には大企業の経営者であったとしてもおかしくない人物も多い。もし大企業の経営者も務まるベンチャー起業家が存在するとすれば、という仮定法を考えてみる。その人物は大企業しか経験しえぬ経営者よりも能力面や実務面で桁違いのパフォーマンスを披露することだろう。マイクロソフトのビル・ゲイツ氏などはその典型的な例ではないだろうか。
実績や知名度がゼロのベンチャーを立ち上げるのは、温室みたいな大組織で過ごすのとでは格段の差がある。多くのベンチャー起業家は全財産を事業に費やし命がけで経営を実践している。自然淘汰の厳しい環境に自らを置くことによって洗練された経営力というものが自ずと磨かれてゆくからだ。
大企業のトップたるものは優秀であって当然である。さらに、その人物がベンチャーという厳しい環境で鍛えられたならばと想像してみるとこれからの産業界の激動の動きが読めてくるかもしれない。
設立間もないベンチャーが既存の大企業の基盤を揺るがす勢いにあるのは、経験は浅いかもしれないが大企業では決して経験しえないような数々の修羅場を潜り抜けてきた結果としての経営力にあるような気がする。
これから潜在的に有能な人材がベンチャー企業を起こし自らの経営力を伸ばす傾向が加速し、ベンチャーが経営力という観点で大企業を遥かに凌駕する例が顕著になるだろう。
そうなれば経営力のあるベンチャーの中には、経営力は乏しいが資産価値ある大企業を飲み込もうとするものも出て来るだろう。それが自然の流れになろうというのが個人的な見解である。
2005 年 10 月 17 日 : シンクロニシティ
遠くの見知らぬ人が自分と同じように感じたり考えたりすること、シンクロニシティ(シンクロ)は珍しい現象ではない。音楽の世界では人びとの心の間でその曲を聴きたい気持ちがどれくらいシンクロするかで、それがヒットするかどうかが決まるという。(※ 「プロデューサーは次を作る」 小室哲哉 著 )
新しいマーケットを自ら創造する強力なパワーを持ち得ないとすれば、人びとの潜在意識に宿る心や気分の一端を探り当てることができたら良い。そんな気持ちを潜在的に持っていた人口に比例して、それは大きなマーケットに育ってゆくのではないだろうか。
今までは BLOG のように個人で気軽に情報発信するツールは少なかった。最近は Google に自分の考えや気分を表現するキーワードを打ち込んで検索して、世の中に自分とシンクロする人たちがどれくらい存在するのか知ることができる。また潜在的に同じように考えていたり感じたりしていた、見知らぬ人びとにメッセージを伝えてそれを顕在化させることもできる。
商品やサービスというのは、人びとの心のなかにある何かが動くから売れるのだろうという仮説を持っている。逆に言えば、最初から心のなかにないものは売れないという発想である。時代に伴い人びとの心も揺れ動くので心の変化は微妙ではあるけれど、基本は同じと感じている。でもまだその答は探索中である。
商売を創める時に注意しなければならないのは、その商品やサービスは潜在的に人びとの心に宿るものであるかどうかということ。それから、人びとの心とシンクロして共に大きなマーケットに育ててゆくことのように思える。
2005 年 10 月 16 日 : マイナスイオン
植物は、蒸散作用で水蒸気を出し自分の体温を調整している。植物が発する水蒸気にはマイナスイオンが含まれている。それには人びとを心地良くする何かがあるらしい。
ネットで調べてみると、
「マイナスイオンは、人体の血液中のカルシウムやナトリウムに作用し、血液中の弱アルカリ化を促進しているといわれている。血液中のマイナスイオンが増加すると、新陳代謝が活発になり、体の抵抗力や自律神経の改善に役立つとされている。」
というマイナスイオンの効能を知ることもできる。
深い森林の中で、人びとが癒され清々しい気分になるのはそんな背景があるようだ。
いかにして独創力を高めるか。ベンチャーにとってそれは死活問題である。組織の独創力に関する問題は、経営者の問題意識の中でも最上位にランキングされると思う。
そんなこともあって、創業の頃からオフィスに惜しみなく観葉植物を配置して、少しでも独創的な研究開発がなされる努力をしている。効能ではなく環境としてのインテリアでありデザインの色彩の素材でもある。
厳しい創業の頃、あくせく働くのではなく、心に余裕やゆとりをどうやって持ったら良いか。それを押さえて進むのも手だと思った。ひとつの新しい発明や発見が、瞬間的に社会を変革してしまうのがインターネットの世界なのだ。