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Sophia Cradle IncorporatedPresident Blog : 2005年05月

2005 年 05 月 14 日 : 携帯Javaの世界的な伸び

携帯 Java のプラットフォームで世界 No. 1 の実績を誇る JBlend 搭載携帯電話の累積出荷台数が 1 億台を突破したらしい。アプリックスさんのプレスリリース:[2005.05.13]「JBlend 搭載製品の累計出荷台数が 1 億台突破」を見て注目すべきなのは世界マーケットの広がりであろう。昨年から猛烈な勢いで伸びていることが分かる。

ソフィア・クレイドルにも昨年末から、北米、欧州、アジアなど海外からの携帯Java圧縮ツールSophiaCompress(Java)への問い合わせが急増しているのだが、その傾きがアプリックスさんのプレスリリースにあるグラフ<JBlend 搭載製品累計出荷台数の軌跡>の曲線のトレンドと正しく一致している。いまはその大半は日本マーケットである。しかし 3 〜 5 年後には 9 割以上が海外マーケットになるはずだ。それ故に、いまからそれに備えた段取りが大切になってくる。

これからの数年で急激に伸びるであろう、携帯Javaの世界マーケットにどのようにペネトレートすべきか?そのための戦略や戦術を練るのは、無限の可能性を探るという意味でベンチャー起業家としての醍醐味である。

何はともあれ、海外対応したソフィア・クレイドル製品SophiaCompress(Java)を出荷できるのは嬉しい出来事なのだ。

2005 年 05 月 13 日 : 海外向け製品を出荷開始!

少し遅れましたが、本日、携帯Javaアプリを圧縮する弊社ソフトSophiaComoress(Java)の海外対応版を発表しました。今月から海外取引を開始します。発表前から、既に数百件の評価版申し込みが海外から入っています。これからが楽しみです。

⇒ プレスリリース(下記の文面よりもこちらの方が見やすいです。)


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《ソフィア・クレイドル、海外向け携帯 Java アプリ圧縮ソフト出荷開始》

〜海外携帯Java 仕様に対応、英語版も出荷開始〜

[概要]

携帯電話向けソフト開発の株式会社ソフィア・クレイドル(本社:京都市、代表取締役社長:杉山和徳、以下 ソフィア・クレイドル)は、2005年5月13日より、海外向け携帯Javaアプリを圧縮するソフトである、「SophiaCompress(Java) バージョン3.1」【※1】を出荷開始します。北米、南米、ヨーロッパ、アジアなど全世界で利用可能な英語版も同時に出荷を開始します。


[詳細]

これまで国内市場において携帯Javaアプリ圧縮ソフト「SophiaCompress(Java)」は多数のゲームメーカー、コンテンツプロバイダー、システムインテグレーターを中心に採用され実績があります。

近年、Javaが搭載された携帯電話は日本のみならず、北米、南米、ヨーロッパ、アジアなど世界中でその普及が進展しています。それと同時に、海外市場において携帯Javaアプリの圧縮ニーズが急激に高まっています。

この度、ソフィア・クレイドルはノキア、サムスン、モトローラなどの海外メーカー製のJava搭載携帯電話にも対応した、Javaアプリ圧縮ツール「SophiaCompress(Java) バージョン3.1」を、2005年5月13日より出荷開始します。

同時に、英語版の「SophiaCompress(Java)」も提供し、海外の携帯Javaアプリ開発会社への輸出を開始します。

本製品の価格は1ライセンス30万円。今後1年間で日本と海外を合計して1000ライセンス販売する計画です。

なお、下記のソフィア・クレイドル社サイトの URL にて、2005年5月13日より、本製品の無償評価版の申し込み受け付けを開始します。

「SophiaCompress(Java)」無償評価版申し込みURL:
/cgi-bin/trial.cgi?compress

本プレスリリースURL:
/news/press/20050513.html

以上

■ 主な新機能

●海外のJava搭載携帯電話に対応
●英語対応
●J2ME/MIDP2.0に対応
●JDK1.4でコンパイルされたJavaアプリが圧縮可能
●クラス融合レベルのカスタム設定機能
●クラス名短縮機能
●圧縮後のメインクラス名の変更機能


■ 用語の説明

【※1】SophiaCompress(Java)

ソフィア・クレイドル社が2002年7月に発表した、国内全てのキャリアの携帯電話向けJavaの仕様に対応した、世界初の携帯電話専用のJavaアプリ圧縮技術。コンパイル後のJAR形式のJavaアプリをそのまま圧縮し、実行できる世界初の携帯Javaアプリ専用の圧縮ツール。大手コンテンツプロバイダや大手ゲームメーカー、大手システムインテグレータなどを中心に多数の導入実績があり、事実上の業界標準Javaアプリ圧縮ツールとなっている。

●詳細情報URL:/products/compress/index.html

■ 会社の説明

株式会社ソフィア・クレイドル
代表者: 代表取締役社長 杉山和徳
設立日: 2002 年 2 月 22 日
所在地: 京都市左京区田中関田町 2 番地 7
資本金: 2645 万円
従業員数: 16 名
事業内容: モバイルインターネットに関する:
1.ソフトウェア基礎技術の研究開発
2.ソフトウェア製品の製造及び販売
3.システム企画及びインテグレーション
ホームページ: /

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2005 年 05 月 12 日 : First finale

2005年5月からソフィア・クレイドル製品の海外輸出を開始する。長らく海外のお客さまから待ち望まれたことがようやく実現できる。同時に海外の有力ITベンチャーとの共同プロジェクトもスタートする。

単純に携帯電話の普及台数から類推すれば、日本を「」とすれば海外のマーケットポテンシャルは「15」くらいである。日本における携帯電話のマーケットは飽和状態だが、海外の方はいまも勢い良く延び続けている。将来的に「15」というこの数字は「20」にも「30」にもなることだろう。

ソフィア・クレイドルのビジネスモデルは国内マーケットからの売上だけでも充分に利益が見込めるように組み立てられている。しかも粗利益率はほぼ100%だから海外マーケットでの売上はそのまま利益になる。自然に儲かる仕組みが実現できるわけである。

利益はスタッフと会社、そして社会の未来への発展に向けた源泉である。そのために、ソフィア・クレイドルを史上類を見ないような高収益企業にしたいと思っている。

それは海外でのビジネスにかかっていると謂っても過言ではない。そのために、Webとマーケティングに関してプロフェッショナルな人材を採用する活動を久々に展開している。

これまでは製品開発で手一杯だったが、これからは海外マーケットも含めたWebマーケティングを戦略的に強化するつもりだ。

これによって、「世界中のあらゆる携帯端末にクールなソフトウェアをネット配信する」というソフィア・クレイドルのビジョン実現に向けた、第一フェーズが完結する。

2005 年 05 月 11 日 : Core concept -12-

米国マイクロソフト社沿革を見ればいくつかの事実が発見できる。一つは1975年から1979年までマイクロソフトの本社がニューメキシコ州アルバカーキにあったこと。もう一つ、現在の本社はシリコンバレーではなく、ワシントン州シアトル郊外の、環境の良いレドモントにあるということ。

私を含め、土地勘の無い大抵の日本人だとピンとこないかもしれない。ニューメキシコ州アルバカーキという街は砂漠のど真ん中にあるらしい。創業の頃、ビル・ゲイツが在籍していたハーバード大学の所在地、マサチューセッツ州ケンブリッジからも、故郷であるワシントン州シアトルからも何千キロも離れている。何故そんなところに本社を構えざるを得なかったのか?そしていま何故ワシントン州レドモントにその本拠地があるのか?私はその点に興味を持ってマイクロソフトの沿革を眺めた。

マイクロソフトの原点である、BASICインタプリッタのプラットフォームはMITS社のアルテア8800であった。そのMITS社の本社がニューメキシコ州アルバカーキにあった。それが、創業以来4年間にわたってマイクロソフトの本社がそこにある所以らしい。常識で考えれば、誰しも好き好んでそんな場所に本社を置かないと思う。ビジネス上の都合からそうしていたわけだろう。そういうことから察すれば、1975年から1979年の4年間、いまを時めくマイクロソフトも今は亡きMITS社のソフトウェア開発子会社的な位置付けに過ぎなかった。決して華々しくデビューしたわけではなかった。

では何故マイクロソフト社はMITS社と運命を共にすることなく、IT業界の巨人として飛び立ってゆくことができたのであろうか?

その根本的な原因はソフトウェアライセンスビジネスという構想をいち早く具体化し実践していた点にあると考えられる。マイクロソフトはアルテア8800用BASICインタプリッタの知的所有権をMITS社に売り渡さずに使用許諾を与えるという契約を締結した。そのソフトウェアを売り払ってしまえばまとまったお金も入る。近視眼的な人間であれば迷わずそうするところであっただろう。しかし、ビル・ゲイツは敢えてその選択をしなかった。

そんな意思決定ができるか否かがマイクロソフトとMITSの明暗を分けたのかもしれない。

私たちのようなソフトウェア開発会社の場合、お客さまの依頼に応じてソフトウェアを開発し、それを納入することでまとまったお金を一気に確実に得るという手段を採ることもできる。そうすれば短期的には売上を大きく伸ばし、社員数を増やすことも簡単にできる。しかし、お客さまに収めたソフトウェア資産はお客さまに所有権があり、自分たちにはそれがない。だから、過去の資産をストックし、それを積み上げるようにしてマイクロソフトのように飛躍できない。

ソフトウェアのライセンスビジネスで特徴的なのは最初の一本目のソフトウェアを開発し販売するまでには膨大な人と時間が必要とされる。けれども、2本目以降については一瞬のうちのそのコピーが創れてしまう。インターネットが発達した今日であれば、ネット経由で世界中にそのソフトウェアのコピーを無制限に何本でも光速のスピードで瞬間的に販売できる。

客観的に見れば、売れるのか売れないのか分からない。そして形すら見えないソフトウェア製品の研究開発に自己資金でもある資本金の大半を投入するのには勇気のいることではないだろうか。しかし勝算が見込めるのならば、そして自分のやりたいことが実現できるのであれば、それにチャレンジする見返りは充分にある。

マイクロソフト社の例を見れば分かるように、ソフトウェアライセンスビジネスの立ち上がりは極めて緩やかだ。しかし、その分時間軸の幅も広く、それが世界中で利用されるものであれば、その高さも天にも届く勢いを保つことだろう。マイクロソフトはその潮流に乗ることができた。そしていまはシリコンバレーとは一定の距離を保つようにワシントン州レドモントに本拠地としている。

確かにシリコンバレーには優秀な技術者が集まり、有望なIT企業も多いかもしれない。しかし集積も限度を超えると弊害も及んでくる。一つは従業員の定着であり、もう一つは住居などの生活環境である。栄枯盛衰の激しいIT業界では、いろんな有望なベンチャーが突然登場し、そしていつの間にか消え去る。シリコンバレーではそんな景色が至るところで見ることができるという。それ故に優秀な技術者の企業への定着率も悪く、生活の物価も他の地域と比べ極端に高い。昨日の日経新聞(2005年5月10日朝刊)に掲載されていた記事からだが、「ムーアの法則」で著名なゴートン・ムーアによれば、有能な技術者のシリコンバレー離れは既に始まっているという。

マイクロソフトの事例からは以上のような背景を学び、ソフィア・クレイドルはソフトウエア製品開発型ベンチャーとし、本拠地は首都圏から離れた京都という地において創業することにした。過去のソフトウェア資産をストックしそれを梃子にして飛躍するアプローチ。それから、ITベンチャーの少ない京都という地だからこそ逆に、輝かしき未来ある前途有望な人材がソフィア・クレイドルという「」に集積すると考えた。

(つづく)

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2005 年 05 月 09 日 : Core concept -11-

最近のAUの携帯電話を利用されている方ならBREWというキーワードはご存知かもしれない。4月のKDDI発表によると、BREWが搭載された携帯電話普及台数が1000万台を突破したという。いまから3年前、私たちがBREWという新しきプラットフォームに着目し研究開発をスタートした時、国内マーケットにBREW搭載携帯電話はどこにも見当たらなかった。世界を見渡せば辛うじて、米国と韓国にそれらを合計しても数百万台というちっぽけなマーケットが存在するのみであった。

そしてBREWに関する研究開発に着手してから一年間というものは国内のBREWマーケットは文字通り"ゼロ"であった。しかも2003年から出荷が始まったBREW搭載携帯電話の出荷台数は伸び悩んだ。

そんな状況で、何故BREWを選択したかという意思決定の理由は、今後のソフィア・クレイドルの経営において極めて重要な要素と思われるので、今日はそのあたりの内容を簡単にまとめてみる。

モノが売れるには原因があるから結果としてそうなるわけで、その原因を創り出すことからベンチャー経営は始まるという風に考えた。モノが売れるということはそれを買う人がいるということである。モノ自体が機能や品質の面で他よりも優れているのは当然であるとしても、肝心の買う人はどこにいるのか?―――ということが最初の最大の課題であった。

マクロ的な視野から俯瞰すれば、日本の人口は”減少”の一途を辿っている。しかし、世界の人口は”爆発的に増加”しているという点に、着目すべきなのではないかと考えた。その事実から生じるシンプルな発想は、世界マーケットは拡大してゆくが国内マーケットは縮小の一途を辿る運命にある、ということである。おそらく今後数十年間はこの傾向が続くものと予測されよう。

ビジネスにおいて成功を収めるには、できるだけ長い期間に渡ってマーケットの伸びが期待できる方が良い。もしそうだとすると、仮に平凡な仕事をしていたとしても、上りのエスカレーターに乗るようにしてものごとは運ばれてゆくだろう。だからこそビジネスとして成立するかどうかの判断基準は、世界マーケットに持っていける製品を創れるか否かであった。そんな中にあって、BREWというプラットフォームは私たちにとって申し分の無いものであった。BREWは"情報通信"という国にとって商業的にも軍事的にも極めて重要なテクノロジーを提供する国策企業的な位置付けにあるUSのQualcomm, Inc.によるものなのだ。これが世界マーケットに拡がってゆくのは時間の問題と見なすことが出来た。

携帯電話だけでも数十億台ものポテンシャルがあるのに、私たちが始めた頃は、この広い世界マーケットには数百万台しかBREW搭載携帯電話は普及していなかった。何よりもスタッフがBREWというプラットフォームにテクニカルな興味を持ってくれたのが有り難かった。才能のあるスタッフが、興味や関心を持ち、熱意と情熱をもって研究開発に取り組めば、売れる資格の有る製品は必ず創れる。その時私はそう思った。

難しかった判断は、そのマーケットがいつからブレークするのか、そのタイミングであった。創業間もないベンチャーであるだけに、マーケットを動かすだけの体力は未だ無い。マーケットの変化の兆しをできるだけ早く察知し、それに向けた対応をするしかなかった。

通常の研究開発型ITベンチャーが創業時にするような受託案件もあまり受注せず、製品の研究開発に専念した。自らが主体となって自分たちの意志で100%自律的な経営をするというのが起業の理由でもあった。VC(ベンチャーキャピタル)などからの資金調達や銀行からの借り入れも創業以来ない。自社オリジナルのソフトウェアのライセンスを販売するビジネスなので仕入れもない。だから自己資本比率は100%に近く、経営には自由度と自律性がある。

ターゲットとすべきポイントは、数千万円かけてやる最初の研究開発投資をどういうタイミングで回収するかという一点に絞られた。研究開発だけをしているとお金も出てゆく一方なので、そのままだと何れ資金も枯渇し、倒産という憂き目を見ることに成りかねない。だから、研究開発をしつつその資金を得るために、スケールとしては、ソフィア・クレイドルの基幹製品よりは小粒なものも並行して研究開発し、その製品化と販売によって本命の製品の研究開発を支えた。

携帯電話の世界マーケットを考えた上で、製品寿命も長く、多くの人々に利用してもらえそうだと思ったプラットフォームがもう一つあった。それが携帯電話向けのJavaである。JavaはNTTドコモやボーダーフォンの携帯電話にも搭載され、3年前の2002年、既に数千万台ものマーケットが国内に実在していた。だから人々に必要とされ、売れる製品さえ創ればそこから収益を上げることは不可能では無かった。その時に閃いたのが、Javaのアプリケーションを圧縮するツールであった。携帯電話のアプリケーションにはサイズ制約があり、その問題をどうやってクリアすればよいかという点に、お客さまのニーズは確かに存在していた。

過去にこの日記にも記したように、このJavaアプリケーション圧縮ツールSophiaCompress(Java)の製品化と販売はさまざまな問題が発生したが、そんないくつかの壁をなんとか乗り越えて製品は売れるようになり、ソフィア・クレイドルの本命ともいえる基幹製品の研究開発を支えてくれた。最近では、SophiaCompress(Java)に対する海外からの問い合わせも増加の一途を辿り、今月ようやく海外対応版を出荷する予定である。

研究開発型ベンチャーの場合、初期の研究開発投資をどうやって賄うかという大きな難関が立ちはだかる。私たちは自由に好きなことを自分たちの意志で決めて実行することに重きを置いた。だから外部からの資金調達には最初から消極的なスタンスを取った。そしてそのためにはどうすれば良いかをじっくりと考えた。またできるだけ永続するようなスケール感のある企業へと育てたい夢と希望もあったので、常に世界的な視野からマーケットを眺める努力を欠かさなかった。

(つづく)

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2005 年 05 月 02 日 : Core concept -10-

マラソンは一人で42.195キロを駆ける陸上競技だ。大きな組織に属していれば、訓練や施設などの練習面で恵まれるかもしれない。けれども、レースの行方を決める要因はその選手の個人的な能力や才能、情熱にかかっている。複数の有力選手がチームにいるからといって、駅伝のようにリレーするわけにもいかない。

ベンチャーはゼロからスタートするものである。最初は小さな存在に過ぎないのに、自分よりも理論上強い競争相手と勝算のある戦いをせねばならない。既存の競争相手には歴史があり、それ故に人材や資金、設備の面で有利なポジションにある。創めたばかりのベンチャーがそんな相手に真っ向から挑めばたちまち辛酸を舐める結末に終わるだろう。

だから最初はできるだけ競争の無い場を選択して行動するのがベストである。たとえ戦わねばならない状況に追い込まれたとしても、自分の強みを活かして1対1の戦いに持ち込める事業領域を予め選ぶということが何よりも肝要だ。自分以外に誰一人いない砂漠のようなところでビジネスを創めるのには勇気がいるかもしれない。しかしそれこそがベンチャーの定義といってもよい。

例え話で言うならばこんな感じである。最初、競合が全く無ければ、42.195キロのマラソンもただ一人で独走しているような状態に近い。それがレースの終盤の決め手である35キロまで続き、その時になってようやく競合がそれに気が付いてスタートした時には時既に遅しということである。オリンピックのゴールドメダリストにしても35キロ先をゆく素人ランナーを退けるのは至難の業であろう。最悪、マッチレースになったとしても10対1よりも1対1の戦いに持ち込むことができれば勝算というものも充分に見込める。

ベンチャーが離陸できるか否かはこの戦略がうまく功を奏するかに掛かっている。大企業であれば優秀な人材が無尽蔵にいるが、ベンチャーではそれは望めない。しかし自分を含めて最低一人は闘える人材がいるのだから、戦略と戦術次第である。数は少ないかもしれないが情熱のある人材が得られるかもしれない。

仕事の結果において最も大きくモノをいうのは最終的には情熱である。ベンチャーでは、その仕事が好きだからやっているというのが大半のケースであり、それに賭ける思いや情熱だけは他の誰にも負けないくらい持っている。それこそが1対1の勝負を決する分かれ目となるのだ。

誰しも倒産の憂き目にだけは会いたくないものだ。そのためにどうすればよいのか、私はそのことを第一に考えてソフィア・クレイドルというベンチャーを創めた。

携帯電話のソフトウェアは物理的、コスト的な制約のため、プログラムのサイズをできるだけ小さく抑えて作らねばならない。現段階においては量よりも質が重視される。一人でもいいから、小さくてクオリティの高い究極のソフトウェアを創れるプログラマーが欲しいという世界である。しかし、日本のソフトウェア業界では、プログラミングの仕事の対価がプログラムのサイズに応じて支払われるという悪しき慣行が長く蔓延っていた。

全く同じ機能をするプログラムをAという人は1000行で、Bという人は100行でそれぞれプログラミングしたとする。携帯電話のプログラムであれば、真に評価すべきはBの仕事である。実は、それはAの仕事よりも何十倍、何百倍も価値のある内容なのだ。ソフトウェアの開発生産性で個人差が桁違いなほど顕著に現れる原因は大抵これに所以する。しかしながら、このことは一般には未だよく理解されていない。だから私たちのようなベンチャーでも入れる隙間を至るところに見出せる。

至近な例を挙げるならば、現在皆さんが使っているWindowsパソコンにしても、1970年代末にはXero Altoというコンピューターにその原型が実現されていた。しかし実際に一般の人々に利用されるまでには10年以上もの時を要した。マイクロソフトが実用化するのにそんなに時間を要したのは、それだけ大きなプログラムを記述せねばならなかったということだ。Xero Altoでは、コンピューターの命令自体がシンプルに設計されていたので、Windowsのようなシステムを開発するのに、長い長いプログラムを書く必要は無かったのである。

競合と1対1で戦うことになった場合は、どうすれば1人で競争相手の10人分、100人分のパフォーマンスを発揮できるだろうかというところに思考を凝らした。そのヒントはXero Altoにあったと言えるかもしれない。

(つづく)

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